※追伸:2020年8月現在,9月入学の話は立ち消えになっています。
にわかに9月入学へと動きが活発になっています。
文科省がこの2カ月,無策を通してきたのはこの目論見があったためだったのかと驚きました。
どさくさに紛れて,議論もそこそこに大きな制度改革をすることにはまったく納得がいきませんが,9月入学で「得する人」と「損する人」について考えてみたいと思います。
9月入学で「得する人」
受験生(特に,公立高校3年生)
そもそもこの9月入学の大義名分は,地域による教育格差をなくす,ということです。なるほど,コロナの影響の少ない地域から学校を始めたくても,ほかの地域が黙っていないということなのでしょう。
そして,その中でも,本来ならば来年1月に共通テストを受ける高校3年生は,休校が3か月目に入り,しかも学校は教育を放棄していますから,教育格差の影響をもろに受けるでしょう。塾に行っていなければ,この2カ月をほぼ完全なる自習で乗り切れと言われたも同然なのです。
もし9月入学になれば,もっとも得をするのは,休校期間中にまったく教育を受けられない生徒,ということになります。具体的には,塾に通っていない公立高校の3年生です。私立の進学校であれば,この2カ月間,何らかのサポートを学校から受けているはずですが,公立高校では通常の休みのごとく,課題を出して終わりです。こんなことでは年内に入試の出題分野を習い終えることすらできませんし,習い終えたとしても,演習の時間がまったく足りません。
ですから,もっとも得するのは,コロナの影響が甚大で休校が長引く地域に住む,公立高校の3年生で塾に通っていない人,ということになります。同じ理由で公立高校の塾なし中学3年生も得をする人に該当しますが,入試の時期が大学入試よりも遅いこと,また入試の範囲が狭いことなどから,高校3年生の次に「得する人」としたいと思います(勝手に)。
公立学校の教育に関わる大人
この2カ月,政府が教育についてまったくの無策だったことが不思議でなりませんでした。最初の休校要請は突然(の思い付き)でしたから仕方ないとしても,あと1か月延長が決まったときに,まったくその間の教育について何の具体策も講じられなかったことにはあきれました。
9月入学をもくろんでいたという文科大臣の意図的な無策だったのか,それとも無策の結果9月入学を唱えるようになったのかはわかりませんが,現場の教育者たちは安堵したことでしょう。
特に,公立学校はこの休校の間,バタバタと民間の中小企業が倒れていく中,教育というサービスをまったく提供することなく2カ月間も有給で暮らし,さらにそれが8月まで続くかもしれないわけです。公務員というのはすばらしい。
対して,私立学校は戦々恐々としていることでしょう。9月入学になった場合,来年は何月に卒業するのかという問題が必ず浮上するでしょう。私立学校はたとえ学校が開いていなくとも休校期間中も授業料は発生しているはずですから。8月卒業ということになれば,生徒「の保護者」はたまったものではありません。また,すでに3月卒業を想定してオンラインでカリキュラムをこなしているでしょうから,半年延長されてもやることがないでしょう。
ということは,やはり3月卒業,9月入学の方が現実的。となると,4月から8月までの空白の半年,私立各種学校は全学年分の収入を失うのです。そんなことが果たして可能なのでしょうか。
「損する人」について書き始めてしまいましたが,詳しくはまた明日に譲りたいと思います。