コロナによる休校措置の最大の被害者は何といっても受験生。ただし,すでに,高校入試については,コロナ休校による不利益が出ないよう,出題内容についての配慮を求める通達が文部科学省から各都道府県の教育委員会に出されていました。
そうなると,残る被害者は大学受験生となる現役高3生。その高3生に朗報が!!
2021年の9月入学がどうやら見送られるのに伴い,2021年度大学入試の日程および範囲の見直しを文部科学省が検討しているというニュースが。現役生,浪人生,高校2年生への影響について考えてみます。
現役高3生への影響
共通テストのドバタバに始まり,コロナによる休校騒ぎまで襲ってきて,今年の高3生は振り回されてばかりで気の毒としか言いようがない。
これを何とかしようと9月入学なんて恐ろしいことを言っていた文部科学省の萩生田大臣でしたが,「そんなアホな」と常識人たちが声をあげ,来年からの9月入学はなくなりました。
これを受けて,最大の「教育格差」が現実のものとなるであろう高3生のために,ようやく現実的な調整を開始したようです。
2021年大学入試日程
萩生田光一文部科学相は29日の記者会見で,2021年度大学入試の日程を見直す検討を開始した,と発表しました。
では,いつになるか?ということですが。
通常ならば,1月中旬にセンター試験,2月が私立大学入試,2月25日~国公立大学前期試験,3月12日~国公立大学後期試験,となっていました。
私立大学の入試自体は後ろ倒しできそうに見えますが,実際には,私立大学の入学者が最終的に決まるのは,国立の後期試験が終わり,まず国公立大学の進学者が決定し,さらに彼らが滑り止めにしていた私立大学への入学を辞退し,私立大学で繰り上がり合格があり,入学の意思表示をしてから,となり,通常でも3月末にならないと全員の最終的な進学先が決まらないのです。
さて,では文部科学省の言う「日程の後ろ倒し」を実現するにはどのような調整の可能性があるのだろうか。
2021年大学入学も後ろ倒し
これが一番現実的な気がする。一か月ほど入学を後ろ倒しして,2021年度大学入試スケジュールも一か月すべて後ろ倒し。
大学で受ける教育は一か月分減るわけですが,それを四年間かけて大学が何とかするか,単に一か月分減らすかは,あとは大学でよしなに,という可能性は十分にありえる。
一か月減ったとしても,最初から大学がそのように宣言しておけば,「一か月減ったのだから一か月分の授業料を払いたくない」とだだをこねる学生や保護者はいないだろう。いやならば最初から入学しなければよい。入学したい人ははるかに多いだろうから,授業料の問題も出ないでしょう。
国公立大学の後期試験をなくす
上記のように,大学入試というのは,
・共通テスト
・私立大学入試
・国立大学前期試験
・国立大学後期試験
の順で行われます。ずるずると入試が長引く一番の原因は,国立大学の入学手続きの締め切りが3月27日と非常に遅く,それを受けて私立大学の繰り上げ合格などもあるためです。
さて,最近は難関大学を中止に,この後期試験を廃止・縮小する動きが強まってきています。2016年度は東京大学が,2017年度は大阪大学が後期試験を廃止しています。また,一橋大学,京都大学,名古屋大学でも後期日程を縮小しています。
そこで,2021年度の入試後倒しを実現するために,国立大学の後期日程を廃止する,ということも可能性としては考えられます。
後期日程を廃止した場合,これまで3月15日であった国立大学前期日程の入学手続きの締め切り日を,後期日程の入学手続き日まで後ろ倒しにして3月27日とすることができます。その差12日。後ろ倒しにする,というにはあまり大きな差ではありませんが,入学時期を変えないのであればこれが限度でしょう。
2021年度大学入試の範囲
萩生田文科大臣は,2021年度大学入試の日程の後ろ倒しとともに,入試の出題範囲の見直しを検討していることを発表しました。
試験範囲の見直しと一口に言いますが,教科によってやりにくい教科とやりやすい教科がありそうです。
まず,言語系(国語・英語)は出題範囲を見直すことは難しそうです。小学生の漢字とは違い,どの単語を何年生に習うなどと決まっているわけではないため,出題範囲などないも同然です。
次に,数学は,数I,II,IIIと分かれているので,積み重ねの教科ではあるものの,一定程度までは範囲の見直しが可能でしょう。
そのほかの教科は,試験範囲から除外する単元の指定が比較的しやすいのではないかと思います。
そうなると,現役生が集中するべきなのは,1,2年生の既習事項と,範囲の調整がしにくい英語,ということになりそうです。
浪人生への影響
さて,9月入学のあおりを受けないで済んだ浪人生ですが,受験日程の後ろ倒しと範囲縮小は浪人生にどのような影響を与えるのでしょうか。現役生と比較しつつ考えてみたいと思います。
まず,入試日程の後ろ倒しは,入学を後ろ倒しにしない限りはそれほど規模の大きなものにはならず,現役生を助けるとまでは言えないでしょう。ということは,浪人生の脅威にはなりそうにありません。
より影響が大きそうなのは,出題内容の見直しです。これは特段だれにも大きな影響を与えることなく,文部科学省の胸三寸で何とでもできるからです。
具体的な見直しの内容については6月のうちに明らかにされるそうですから,まずは1,2年生の範囲と,内容を学習時期によって削ることの難しい言語系教科(国語,英語)の学習をしっかり固めておくことが先決でしょう。