ようやく一段落しそうな様相を呈しているコロナ騒動。
生徒たちは,全国の学校が休校になるという前代未聞の事態を経験しました。
3か月間,ほぼ放置されなすすべもなく過ごした生徒から,オンラインの授業を受けて学力を維持しようとしてきた生徒まで,状況は実に様々です。
「格差が出る!」「ずるい!」
それぞれが色々な思いを抱える中,2021年度の高校受験で起こりうるシナリオについて考えてみたいと思います。
シナリオ①:入試の時期も入学時期もそのままで,入試の出題範囲が狭まる
突如として9月入学の話が持ち上がっています。以前から9月入学を目指しながらもうまくいかず,コロナで3か月も教育を置き去りにしてきた文部科学省の意見に多くの知事たちもなぜか賛同しています。
ただ,これまで何度も目指して実現できなかったこの大変革を,この国難に,この緊急時に行うべきではないという慎重論は当然ですし,そんなことにそそぐような余力は社会にはないでしょう。⇒予想通り,9月入学の話は立ち消えになりました。
そこで,考えられるのは,通常通りの時期に入試を行い,高校の入学も4月のまま据え置く。ただし,そうなるとお問題は,3か月間教育を受ける権利を完全に奪われた生徒たちの学力格差です。
塾に行っている生徒や私立学校に通う生徒はオンラインで授業を受けられたかもしれませんし,親がある程度子供に課題を与え,教えられる家庭もあったかもしれませんが,学校からプリントをもらっただけで途方に暮れている生徒,やる気もおきないで放置している生徒もいるはずです。
すでに夏休みが削られることが決定しており,体育や家庭科や音楽を一切排除すれば,通常と同じ時期に入試・入学を行うことはまだ可能でしょう。また,そのためには夏休みは完全に返上でも構わないとも思います。(3か月休んだ後,2カ月間段階的を経て通常登校へと戻り,なぜまた夏休みを設けるのか,不思議でたまりません。教職員のためでしかない気がします。)
そうは言っても,先生がすべての範囲を教え終わるのは入試直前ということになってしまうのは確実です。また,文部科学省は,出題範囲や内容等で受験生が不利益を被らないよう配慮するよう通達し,その例として,「中3の内容からの出題は適切な範囲となるよう設定」「問題を複数から選択できる出題方法とする」などを挙げています。
このような出題内容の配慮を求めたという背景には,まだ4月入学を前提として考えている,ということです。9月入学はにわかに浮上した案で,決定事項でもなんでもありませんから,当然ですね。
シナリオ①の場合のコロナ禍受験の勉強方法
通常通りの日程ということになれば,中3の学習範囲を出題する場合には,後半部分は出題しにくい,出題する場合には選択問題制を取る,などの工夫が考えられます。
そこで大切になってくるのは,1,2年生の学習内容の徹底的な復習です。まだ休校中の生徒もいるでしょうが,予習は必要ないと断言してしまいます。とにもかくにも1,2年生の内容を演習をすることが入試の得点源となるでしょう。
シナリオ①の場合,高校受験はどうなるか?
さて,4月入学の場合,確実に中3の学習内容からの出題は例年よりも減ります。⇒都道府県によって,中3後半の範囲を出題範囲から除外した県,ほとんど除外しない県,中3の難問は出題しないと宣言している県,など様々です。
≫2021年度全国公立高校入試の日程~範囲の変更に注意!!~
そこで生じるのは,入試の点数のインフレです。
中3の学習内容というのは,特に英語と数学についていえば,中1,中2の既習事項を発展させた内容になりますが,それを出題する比率が低くなれば,当然入試は例年よりも易化することは容易に想像できます。
また,理社について言えば,中3の学習内容はそれまでの既習事項の応用ではありませんが,単に入試の出題範囲が減るというだけでも,やはり点数は取りやすくなり,入試の点数のインフレが起きることが予想されます。
中1,中2の徹底的な復習,今はこれに徹するよりほかありません。
シナリオ②:入試を遅らせ,9月入学
シナリオ③:入試の時期と入学時期を若干遅らせ,入試の出題範囲が狭まる
4月入学では,失った3か月間を取り戻すのには時間が不足する。
かと言って,9月入学にするのにも壁が厚い。
というわけで,その間を取って,入試の時期をギリギリまで遅らせる,ということもありえます。⇒これも実現しませんでした。
そもそも,学校がやっていることにはさまざまな矛盾が生じています。
入試においては,内容について配慮するよう求めていながら(4月入学を前提としているものと思われる),夏休みは取る(9月入学を前提??)。
公立高校入試は,早いところでは2月の中旬から始まり,そのような場所では長すぎる春休みがあります。この際それは必要ないので,休校期間の長かった都道府県ではできるだけ入試を遅く行い,入学も少し遅らせれば,出題範囲に配慮をせずとも不公平感のない入試ができるのではないでしょうか。
そもそも,塾に行ける人と行けない人,私立学校に通う人と通わない人など,世の中不公平なものなのに,完全な公平性を担保しようなんて無理な話だと思ってしまいますが,そんなことを言ってしまっては身も蓋もありませんね。
ともかく,学校から適切なケアを受けられなかった受験生,塾なしの受験生は,不公平だと腐っても状況は変わりませんから,ともかく復習,復習!!!
どのシナリオだとしても,高校受験生の現時点での最大のフォーカスは,中1,中2の復習だと自信をもって断言してしまいます。
追伸:2021年度全国公立高校入試のその後の状況
2020年8月8日現在,ほとんどの都道府県が2021年度公立高校入試に関する情報を公開しています。
コロナによる影響がもっとも大きかった,東京,大阪,北海道などは,三平方の定理や関係代名詞を始めとする,高校入試の頻出テーマ,あるいは高校入試そのものの根幹とも言うべき分野を試験範囲から除外しています。
一方で,その近隣県を含め,中3最後に学習する(ことになっている),入試とはほぼ無関係の分野のみ除外するにとどめ,ほぼ例年通りの範囲から出題する都道府県が大半を占めています。
しっかりと自分の住む都道府県の公立高校入試の範囲を確認するとよいでしょう。
今年の受験生はこの状況からすると気の毒としか言いようがありませんが,将来いつか何かの形で,これが糧になる日が来ることを願っています。がんばれ,受験生たち!!
≫2021年度全国公立高校入試の日程~範囲の変更に注意!!~