わが子だけでは飽き足らず,塾を開業してさまざまな生徒をつぶさに観察してみると,今まで知らなかったことが浮き彫りになってきました。成績を上げるために必要な要素についてです。
結論:勉強時間×勉強の質×能力=成績アップの程度
結論から書いてしまいますと,成績アップに必要なのは,
・勉強時間
・勉強の質
・個人の能力
の3要素です。そして,これらは掛け算であることを忘れてはなりません。
つまり,どれかが「0」だと結果も「0」になるのです。
また,勉強時間と勉強の質については語られるものの,個人の能力についてはっきりと書いてある塾のホームページはごく少数ですが,このことを受け入れて対処法を考えることがむしろ大切なように思うので,今日はあえてそのことについても触れたいと思います。
成績アップに必要なもの①~勉強時間~
成績アップに欠かせないもののトップバッターは,何をおいても「勉強時間」です。
どれほど天才が質の良い勉強をできるとしても,勉強時間がゼロならば,当然成績もゼロです。
「でも,試験勉強前に全然勉強しないのに高得点を取る友達がいるじゃないか」と思う人かいるかもしれません。
そうです,確かにそのような人がいます。でも,この人の勉強時間は実はゼロではありません。試験勉強前に家で勉強していなくても,長時間勉強しています。
それは,学校の授業時間です。
「勉強時間」というと,家庭学習や塾での学習を思い浮かべるかもしれませんが,学校で授業を受けている時間数を数えてみてください。学校での勉強時間数はそれ以外の放課後の勉強時間数をはるかに上回っているはずなのです。
試験前にほとんど勉強しないで高得点を取る多くの生徒は,授業時間内に内容を理解し,一定のアウトプットしただけで足りるため,それ以外の勉強を必要としないのです。
授業時間だけでは勉強時間が足りない生徒は,勉強時間を増やすのが最も簡単な成績アップの方法です。
成績アップに必要なもの②~勉強の質~
勉強時間がゼロなら成績アップの度合いもゼロになることは,おそらくだれでも理解ができると思います。
が,勉強の質がゼロの場合でも成績アップにはつながらないことを理解しているお子さんはどれくらいいるでしょうか。
ここでいう勉強の質とは,集中力と効率的な勉強方法です。
親から言われてしぶしぶ4時間机に座っていても,大した結果は生まれないでしょう。
また,新しい漢字を覚えるために20回ずつただ何も考えずや覚えようともせずにやみくもに書いてるだけでは,ただの手の運動であり,それは勉強ではなく「作業」になってしまい,これも勉強の質としては低いものとなります。
勉強の計画を立てるときに,時間でその日の勉強を評価しないように,と私は常々指導します。たとえば,1日3時間勉強する,という時間軸の目標を立てた場合,3時間机の前に座ることが目標となってしまい,質が伴わないことが多いからです。
そうではなく,やることを軸に目標と計画を立てることがよいでしょう。
月曜日は数学のワーク2ページと英単語10個覚える,などという具合です。
また,自分に合った効率のよい勉強方法を模索する不断の努力も必要です。
成績アップに必要なもの③~能力~
成績アップに必要なものは,勉強時間と勉強の質であることは,どこの教育系のサイトにも書いていることだと思います。
しかし,それは正確ではありません。
その二つに加えて個人の能力が必要なのは明らかです。
勉強時間×勉強の質×能力=成績
例えば先ほどの,テスト前にまったく勉強しなくても満点を取る生徒の場合,何が起こっているか見てみましょう。
勉強時間(2)×勉強の質(10)×能力(5)=成績(100)
学校でしか勉強をしていないため,勉強時間は多くはありません。
ただし,その授業時間内に発揮している集中力は非常に高く,授業中に学ぶことをすべて吸収しようとするため,勉強の質は極めて高いと言えます。
また,理解力が非常に高く,授業中に聞いたことはすべて記憶できるという高い能力も持ち合わせています。これを掛け算すると,100としましょう。
さて一方,塾に通ってはいるけれども,暗記が不得意でなかなか成績が上がらないという生徒の場合,
勉強時間(3)×勉強の質(7)×能力(3)=63
としましょう。
まず,塾に通ってはいますが,塾で勉強に費やしている時間はどのくらいでしょうか。一教科,週に90分とします。
一方,学校で英語・数学の授業は週に4回はあると思うので,週に200分です。いかに学校の授業が長時間で大切かが分かるのではないでしょうか。塾に通って塾だけで勉強したくらいでは,たいして成績アップがのぞめないことは上の公式でお分かりいただけるのではないかと思います。
「偏差値30から70に上がった」なんて話を聞くことがあります。その話の信憑性を否定するわけではありませんが,そのようなことが起こるには,①相当の勉強時間が必要であり, ②相当集中して最も効率のよい勉強方法を採用する必要があり, ③さらに,もともとの能力が高かった,すなわち能力があったのに①②がゼロに近かった人である必要があります。
個人の能力について明言することははばかられる風潮がありますが,この大切な要素を無視して全員に同じ勉強方法や勉強時間を提案することなどできません。それぞれに合った勉強時間と勉強方法というものを見いだす必要性を強く感じます。
能力をカバーするもの
勉強時間×勉強の質×能力
の公式のうち,自分は能力が高くないな,と感じる人が圧倒的に多いと思います。
そんな人こそ,自分を直視して,この公式のどこを増やせるかを考えてみてほしいのです。
例えば,授業の受け方はどうでしょうか。
小中高生の勉強時間の大半を占める学校の授業時間を,もっと中身の濃いものにはできないでしょうか。授業を上の空で聞いてはいないでしょうか。あるいは,理解できないので集中力が低くなってはいないでしょうか。そのような場合には,ある程度予習して授業に臨むことで,分からない点にしぼって授業を受けることができ,集中力が高まることがあります。
あるいは,勉強時間は増やせないでしょうか。1日10分ずつの隙間時間に単語を覚えていけば,週に70分の単語を覚えられます。あるいは,テスト前2週間しか勉強していないのでしたら,3週間前から勉強を始めてはどうでしょうか。
私の経営している塾で40個の英単語を覚えてくるように言うのですが,これを5分で覚えてしまう生徒もいれば,1時間かかるお子さんもいます。
これは能力によるところが大きいので割り切るしかありません。
能力が5ならばかける時間は1でかまいませんが,能力が1ならばかける時間は5にするしかないわけです。あるいは,効率的な暗記方法を編み出せれば,時間を3にすることはできるでしょう。
自分の強みと弱みから目をそらさず,それを特定して,それをどのように補うかを考えることは,今後の人生でも大きな財産となるように思ってなりません。