季節の節目になると、塾に行くべきかどうか、行くならどの塾に行くべきかで頭を悩ませる方もいらっしゃるのではないでしょうか。塾に行くべきかどうかについては以前書いたので(「塾なしでトップ公立高校に合格できる?」)、今日は個別塾と集団塾の特徴と、それぞれどのようなタイプの生徒に向いているのか考えてみたいと思います。
ここで言う個別塾とは、2,3人の生徒を1人の講師が一度に教えるスタイルで、個々に異なることを学習します。二人が問題を解いている間に講師が残りの一人に教える、という形です。集団塾とは、大勢(人数は塾により異なる)に対して一度に同じ授業を行う形式です。
入塾のタイミング
当たり前ではありますが、個別塾と集団塾では、授業料が異なります。個別塾は教師一人につき、一度に2,3人しか教えられませんから、当然授業料は集団塾より高くなります。後で述べるような特別な事情が特にないかぎり、中2の夏休みまでに入塾するならば、集団塾で事足りるのではないかと思います。なぜなら、その時期までであれば、塾の先取り学習はそれほど進んでいるとは考えられないため、中途入塾であっても容易についていけると思われるからです。
ただし、中2の秋以降、塾は入試に向けて先取り学習を始めるはずですので、学校のペースで学習していた生徒は後れを取ったり、塾によっては入塾を拒否したりすることがあるので注意が必要です。
その点、個別塾ならば自分の今いる場所からスタートしてくれるはずですから、入塾時期を選びません。
得意教科・不得意教科の偏り
集団塾の多くは、英数、あるいは国数英、さらには5教科をセットで教えます。ですから、得意教科と不得意教科がはっかりしていて不得意教科を強化するために入塾するという場合に、得意教科の授業は時間の無駄になってしまいます。
塾に通うとなれば、通塾時間だけでも取られるうえに、当然授業時間も取られます。授業を一度聞いても理解できない教科を丁寧に教えてもらうために通うのならいざ知らず、学校の授業で理解できるのに、わざわざ塾でもう一度同じ説明を聞き、同じような問題を解くのに時間とお金を割くのは得策とは言えません。
例えば、英語は自力で90点取れるけれど数学が壊滅的だという場合、集団塾よりも個別塾が合っているでしょう。英語は家庭学習を続け、数学のみ個別塾で教えてもらえばよいでしょう。
部活動などで忙しい生徒
部活動等が忙しい生徒や、時間などがイレギュラーな生活をしている生徒にとっては、時間の融通が利きやすい個別塾がよいでしょう。集団塾の場合、休塾時の対応は様々です。個別の補習をしてくれる塾は相当恵まれている方で、通常はプリントないしテキストのページを教えてくれて、「やっとけよー」と言われるのがいいところではないでしょうか。
何かと忙しい中学生。勉強だけでなく何か打ち込めることがほかにもあることはすばらしいことですから、両立できるよう個別塾を選択してもいいかもしれません。
講師の質
ここまでは、生徒側の事情について書いてきましたが、こちらは塾の事情についてです。
講師についての簡単明瞭なルールが一つあります。それは、質のよい講師ほど大勢の生徒を一度に教える、ということです。大手予備校の人気講師を思い浮かべてください。一つの教室の100人を相手にするどころか、動画などの機器を使って、日本全国の何千、何万人(もしかするとこの時代では世界に点在する日本人)を一度に教えています。
なぜか。それは、質のよい講師ほど授業の単価が高く、大勢の生徒の授業料を集めないといけないからです。
個別塾なのに集団塾と大差のない授業料で授業を受けられるところがありますが、授業料につられずに、どのような講師が教えているのかしっかりと確認する必要があります。
入塾する前に体験授業を受けることはもちろんですが、このとき、多くの個別塾では、教えるのが上手な、いわば営業用の講師を体験授業に充ててくることが多いようですから、「その後もずっと教えてくれる教師に」体験授業をお願いしたい、と一言言っておくことが大切です。
わたしはある大手の個別塾で教えたことがありますが、教師選考の際に大学名も聞かれず、試験も子供だましのようなものでした。また、時給がほぼ最低賃金で、家庭教師の時給の三分の一でした。これでは質のいい先生は集まらないだろうと思いました。
一方、集団塾では多くの場合、フルタイムの講師が教えているはずです。また、大学生の講師であっても、それなりの講師料をもらえる場合には質のよい講師である可能性があります。
どういう講師であるかを見極める一つの方法は、大学生が使うようなアルバイトのサイトなどで、その塾の講師募集の条件を見ることです。時給と授業の質はほぼ同じと思ってよいでしょう。具体的に言えば、時給2,000円を下回る場合には、講師の質に大きな期待はできません。
個別塾、というと、個々の子供の状況を見てもらえて、それにそった指導をしてもらえる、と思いがちですが、個別塾の講師の仕事は非常に忙しく、そんな暇はほとんどありません。2,3人、学年も違う子供たちを同時に教えながら、さらにその保護者へのレポート、塾の引継ぎ資料などを時間内に書かなければなりません。それで最低賃金と大差のない時給。いい人材が集まらないのも無理はありません。
自分でしっかりと課題をこなせる生徒ならば、講師の質がおおむねよいであろう集団塾が望ましいかもしれません。事情により個別を希望する場合には、講師の質を見極めることが重要です。
塾のシステム
自習室
塾講師の質とともに重要なもう一つの骨格は、塾のシステムです。例えば、自由に使える自習室を備えているか。家ではやる気スイッチが入らない、という生徒は多いので、自習室はとてもよいシステムです。また、その自習室に先生が一人常時いるような場合には、最高です。
小テスト
勉強嫌いな生徒が勉強せざるをえないシステムがあるかどうかは塾選びにおいて大変重要です。単語や計算、漢字などの小テストを毎回課すならば、定期テストや受験の直前に慌てることなく、着々と実力をつけていくことができるでしょう。
わたしが気に入っているある塾では、レベル別の単語や数学の小テストをいつでも受けることができます。やる気のある生徒は1年生ですべての単語テストに合格しますが、一定の期間にそれに合格しないと、「単語合宿」といって、合格するまでに何時間でも勉強し続けなければならないシステムになっています。そういう塾ごとの「システム」の工夫に着目して選ぶとよいでしょう。
宿題
塾に通っても成績が上がらない、という場合、塾に通っている時間しか勉強していないことが考えられます。塾に通っている時間は一週間の間で数時間でしょうから、それで成績が上がらない場合には家庭でも勉強をする必要があります。
家庭学習を生徒に任せていても、たいていの場合うまくいきません。先ほども述べたように、「生徒が勉強せざるをえないシステム」が必要で、その一つは宿題です。
また、宿題をしてこなかった場合の対応にも注意が必要です。居残りさせて宿題をさせる、などの対応があるのかないのかでは、子供のやる気も変わってくるでしょう。
レベル別のクラスか
集団塾にするかどうかを決めるうえで重要なのは、クラスの構成員のレベルです。中学生の塾にはあらゆる層の生徒が通っています。学校のテストで言えば、90点の層の生徒も40点の生徒も塾にはいるでしょう。
もし学年に一つしかクラスがなければ、学校の授業とほとんど同じことが起こります。それは、平均的な生徒に合わせて授業やシステムを構築する、ということです。これでは塾に通っている意味はありません。90点の層にとっては簡単すぎ、40点の層にとってはここでも難しすぎて役に立たないからです。
できれば、一学年に3クラス以上の集団塾が望ましいでしょう。
第3の選択肢:家庭教師
集団塾と個別塾で悩んでいるなら、ぜひもう一つの選択肢について検討することをお勧めします。家庭教師です。
家庭教師はブルジョワの雇うものだとお思いかもしれませんが、意外にコスパがよいものです。
まず、個別塾とは異なり、教師の素性と質を自分の目でよく確かめることができます。質がよく、生徒と相性のよい教師と出会えれば(ここが一番難しいところですが)、一番お勧めなのは家庭教師です。
集団塾も、そして実は個別塾も、一定の教科課程に従って授業を進めているだけで、生徒が理解しているのでそこはさっと進んで、生徒が理解していないところには時間をかけてしつこく教える、などといった強弱をつける余地はほとんどありません。
優秀な家庭教師は、教科ごと、あるいは分野ごとの強弱を取りながら効果的に学習を進めるため、できている分野に無駄に時間をかけたり、できていないのに時間切れであやふやなまま放置したりはしません。
とにかくオーダーメイドであるため、例えば部活に熱中していて時間がないという子にとっては、まず通塾の時間とエネルギーが取られないことだけでも有利ですし、加えて、中2までは週に一度、不得意科目だけお願いして、テスト前のみ週に二回お願いしたり、基本的には数学のみお願いするけれども、分からない理科の問題も質問できたり、中三の部活が終わってから猛勉強する気になった場合には夏休みに集中的にお願いしたりと、臨機応変に生徒の都合に合わせてお願いすることができます。
塾も中3になると法外な授業料や季節講習費を取ってくるところもありますので、一度比較しているとよかもしれません。
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