開塾してから,塾業界の様々なセミナーに参加させていただき,わたしの学びの場となっています。この1年はズームでほとんどのセミナーを開催してくださるため,ポチッとするだけで手軽に参加でき,大変ありがたいことです。
様々なセミナーに参加するうちに,塾が公言していないけれども,本当は利用者が最も知りたいことの一つに気づきました。
それは,その塾がだれをメインターゲットに据えているかということです。
ほぼ毎日塾で勉強しているのに,80点以上を取れない
最近は個別学習や自主学習スタイルの塾が多いため,ほぼ毎日塾へ行って勉強している,というお子さんもいらっしゃいます。がんばっているのになぜか70点台止まりで,いまいち振るわない,というご相談を受けることがよくあります。
そういう場合,塾で使っている問題集を見せてもらいます。それを見れば,その塾がどの層をターゲットにしていて,その問題集を完璧にすることで何点取れるのかは,だいたい想像がつきます。
実は,塾業界の大きな悩みとして,人手の確保が挙げられます。大学生のアルバイト講師が塾の大きな担い手なわけですが,大学生というものは,一般的には4年間のみの限定のポジションで,常に入れ替わりがあります。
最近は,インターンとして大学生のうちから社会経験を積む大学生などもいて,優秀な大学生を確保することは,塾にとってますます難しい状況になってきています。
さらに少子化も加わって,塾はよりよいサービスを提供しなければいけなくなりました。そのため,以前は集団塾が多かったのですが,最近では個別塾というものが増えました。時間や学習内容を生徒に合わせるスタイルです。
そうなると,ますます講師の確保が課題となります。
そこで,現在主流となっているのは二つのスタイルです。
コンピューターを使った自立型塾
最近,「自立型塾」と言われるものが増えています。コンピューターで学習を完結させ,運営者は教えない,あるいは少ししか教えないスタイルです。
塾側からすると,これは非常に便利です。授業もせず,講師確保の苦労もありません。
また,生徒側についても,人によってはメリットがあります。
コンピューター学習はたいがいの場合,基礎の定着が目的となっています。ですから,それほど難しい問題が出てこないため,取り組みやすいというのが第一のメリットです。
また,紙のテキストを使って基礎を定着させるという場合,解き直しをしつこいほどに繰り返すのが最善の方法。簡単なことなのですが,これを徹底できる中学生はほとんどいません。
コンピューターの場合,これを自動的にやってくれるシステムになっています。ですから,時間をかければ,それなりにできるようにはなります。
ただ,このスタイルのメリットはデメリットでもあります。
取り組みやすいからやる気が出て勉強時間が増え,結果的に定期テストの点数が伸びるというのは,勉強嫌いな層には一定の効果があります。一方,これは難問をほぼ排除していて,テストである一定の点数以上を出すのは難しい仕様になっている,ということでもあります。
ですから,自立型を謳う個別塾のH.P.には,ほとんど場合,実績が掲載されていません。
だからだめな塾だ,というわけではありません。50点でやる気を失っている子供のやる気を喚起し,80点取れるようにさせてくれる塾というのは,その使命においては大変役立っています。
ただ,塾にはそれぞれ,メインターゲットに設定されている層というのがあり,このような塾の場合,80点の100点を取って再上位校を狙う,という生徒には向かない,ということです。あるいは,この塾を利用して基礎力を定着させつつ,100点を取る勉強はほかに自分で追加する必要がある,ということです。
個別塾
次に,少子化に伴い多くなってきたと感じるのは個別塾です。自分の好きな時間に,好きな教科だけを選べて,一対一,二対一,ときには三対一で教えてもらうスタイルです。
個別塾,というタイトルを聞くと,個々の理解度に合わせて緩急をつけながら効果的に教えてくれるように思いますが,個別塾でオーダーメイドなのは,ほとんどの場合時間と教科の選択のみです。例えばとてもよく理解している生徒がいるとして,「この子はよくできるから,もう少し難問をたくさん宿題に出してみよう」とか,あるいは逆に理解に時間のかかる生徒がいるとして,「この子はこの分野は苦手なようだから,時間をかけて教えよう」などというカリキュラム自体のオーダーメイドはほとんどありません。(塾長が一人で教えているような塾は別です。)
効率よく,どんな講師でも生徒がちゃんと理解できるよう,このような個別塾の問題集はとてもよくできています。一度,個別塾で使用されている問題集を作っておられる出版社に伺ったことがありますが,市販の問題集とは比べ物にならないくらいよくできた問題集で,「こんな問題集が世の中にあるのか!?」と感動しました。
これを繰り返し解けば,80点は取れる,という問題集です。
これは,50点前後の層にとっては救世主ともいえるものです。
一方で,80点以上を取りたいならば,この何かを追加しなければなりません。
塾選びで確認すべき点
長々と書きましたが,塾選びで確認すべき点は,「この塾はどの層をターゲットにしているのか」ということです。
ある塾の代表者は,「点数を上げられない生徒は入塾をお断りする」とおっしゃいました。50点の層ならば80点に上げるノウハウがあるが,どの教科も30点に満たない生徒は,点数を上げることができないため,どれほど頼まれても入塾させない,ということでした。とても誠実な対応だと感じました。
大手の集団塾で,大勢生徒がいて,クラスがかなり細分化されている場合は,満遍なくターゲットにしているかもしれません。
まず,自分の現状をよく見つめて,自分がどの層であるのかを理解したうえで,その層を得意とする塾を見つけることがとても重要だと思います。
「この間の定期テストで全教科50点だったのですが,この塾の課題を誠実にこなした場合,80点取れるようになるまでにどれくらい時間がかかると思いますか。」
「現在,全教科80点くらいなのですが,この塾には90点以上取って学年10位以内に入っている生徒さんは何人くらいいらっしゃいますか。」
こんな質問をしてみると,塾の得意とする層が分かってくるかもしれません。