末っ子カンが塾に行き初めてから,通塾の良さも悪さも感じています。
そこから見える塾なし受験の成功のカギについて書いてみたいと思います。
親子関係
塾なし高校受験の成功のコツは,何と言ってもまず親子関係だと思います。
中学1,2年生は思春期真っただ中。しかも,未知の受験というものが1,2年後にせまってはいても,危機感を覚えてはいない。だけど親は経験上知っているから,ついつい子供に「勉強しなさい」とか言ってしまう・・・。
また,この時期の子供は,もう何でも自分でできる大人だと思っているので,指図されることを好みません。小学生のときと同じように接していては,親子関係はうまくいかず,親子関係の上に成り立っていると言ってもいい受験も苦労します。
この時期,子供は親の意見よりも,友達や信頼できる大人の言うことをよく聞きます。親が百回うるさく行ったとしても騒音としてスルーし,一度の他人の言葉がすんなり入ってくる時期なのです。
通塾しないということは,親が受験のマネジメントを助ける必要があります。その度合いは子供の成熟度にもよりますが,最初のうちはかなり親子間の意見のすり合わせが必要になります。
勉強のことで親子関係が悪くなっては元も子もありませんから,中1,中2のうちはともかく親子関係最優先で臨む覚悟が必要です。
「反抗期」と言いますが,「反抗」するのは,何か別の力がかかってきたときに「反抗」するのですから,親が子供に上からの圧力を感じさせない限り,子供はそうそう「反抗」するものではない,ということに,経験を通じて気づきました。
小学生は勉強について一切の競争を排除するのに,中学生になったとたんに自分の順位を知らされ,部活では2年も上の大きなお兄さんと一緒のメニューをこなさねばならず,新しい友達に気を使い,子供たちはそれでなくとも外的な圧力を感じながら,方々のバランスを取りつつ綱渡りのような生活をしています。
この上さらに親が圧力を加えたときにどのような気持ちになるか,親のわたしたちにも経験があるので分かるのではないでしょうか。
茂木健一郎さんがその昔,親は子供をほめるアスリートでなければならない,とおっしゃっていました。いつ何時子供が良いことをしても即座にほめられるよう,常に準備をしていて,もしそのときが来たら,それがどんなに小さいものであっても直ちにほめる能力を,言わばアスリートのように訓練する必要性を説いたのです。行ってすぐにそのことについてほめられると,強い喜びを感じるそうです。
この話を聞いたのは,もうかれこれ10年以上前だったと思います。以来,できるだけ子供を観察し,いいところを見つけるようにしてきました。
いいところと言っても,本当に小さなことです。(実際,日々の生活,特に中学生の日々の生活では,それほど大きなことは起きません💦)
「部活をがんばっている」「毎日遅刻せずに学校に行く」「疲れているのに宿題をやった」そんなことで十分です。
また,「大変だね」「お疲れ様」「差し入れどうぞ」などのいたわりや共感の言葉も同様に親子関係には大切だと感じてきました。
塾なし受験の基盤は親子関係。コーチと選手が息を合わせられるよう,よい関係を作れますように。
親の能力と経験
塾なし受験には,子供の側に一定の能力が欠かせないのですが,その前にあえて言うと,親にも一定の能力と経験が必要です。
またコーチと選手について考えてみると分かりやすいのですが,日本一になったコーチと,その種目をやってみたこともないコーチ,選手はどちらを信頼するでしょうか。
親が受験で成功体験を積んでおらず,勉強もちゃんとやらない人生で,「わたしみたいになってほしくはないから,お前はがんばれ」というような一方的な言葉で動くほど,中学生は簡単ではありません。
また,単純に,親に受験や勉強の成功体験がないと,何をどうやって進めてよいのか分からず不安になり,ただ「勉強しなさい」「この点数じゃ入れる高校ないよ」なんて無駄に子供を刺激するばかりで具体性のない言葉を放つばかりになってしまいます。
塾なしには,ある程度親に経験(塾なしの経験でなくてもいいですが,受験の成功体験)が必要ではないかと思います。
子供の能力
次いで,子供の能力です。
学校の授業を一度聞いて,ほぼ授業中にすべて理解できる能力。これが必要です。これができるお子さんならば,あとは家で復習をすればよいだけですから,話は簡単です。
もし一度で理解できない場合,予習をしていかなければならず,当然予習は復習よりもエネルギーがいりますし,さらに書かれていることを理解する,という塾で授業を受けるよりも高度なことを求められるため,そのような場合には塾に行ってしまった方が効率的なこともあります。
さらに,予習にしても復習にしても,解説を読む力が求められます。大量の文章を読み,正しく理解できる能力が必要です。そうでなければ,親が教えるはめになります。
塾なし受験は,ある意味,不安との孤独な闘いです。だれかに相談することもできず,情報収集し,勉強計画を立て,それを子供が実行できるよう「圧力を極力かけずに」助ける,という,ある意味名人芸です。
ただ,うまく進められると,親子の間に,コーチと選手並みの「同志」の結びつきが生まれますし,その過程でのあらゆることがいい思い出になります。
さらに,通塾と比べると,時間の節約,体力の節約,無駄な勉強の省略,自主性の促進,など,様々な利点があるので,まず3か月やってみることをお勧めします。