中1英語の格差が拡大

小学生の学力アップ術

文科省の指導要領の改訂に伴い,中1英語が驚くほど難しくなりました。これは格差が開くだろうと心配していたら,塾経営者を対象としたセミナーでもそのような現状があるとの報告がありました。

中1までに知っておくべき英単語数

小学校での英語が教科化したことに伴い,これまで中学から学び始めればよかった英単語の多くを,小学生のうちに習得しておくことが期待されるようになりました。

その数・・・

600-700語!!!

改訂前,中学校で学ぶとされていた英単語数が1200語でしたから,その半数を小学校で学ぶことになったのです。

そのうえ,中学校で学ぶ英単語数は1600ー1800語とさらに増えていますから,もはや英語は中学からぼちぼち「abcd」の歌を歌いながら学び始める教科ではなくなりました。

わたしは英語塾を経営しているのですが,この中学英語の異変に気付いた保護者が,「わたしたちの時代のように,教科書本文を丸暗記しただけでは中1のテストも全然点数が取れませんでした。同じやり方ではもうだめなんですね・・・」と困った表情で駆け込んで来られます。

中学で文法を学ぶ時間は激減した

中学入学の時点で相当数の英単語を知っていることが前提になっていることも昔とは異なりますが,もう一つ異なるのは,現在中学では文法を教えるために割く時間が激減している,ということです。

学校では,以前のように「読む」「書く」のみの2技能の学習に加え,「聴く」「話す」の合計4技能の学習をすることになりました。

ところが,英語の学習時間そのものはほぼ横ばいです。

当然,「聴く」「話す」に時間を割くには,「読む」「書く」にあてていた時間を縮小するしかありません。

そのため,文法に割く時間が非常に少なくなっています。

授業では「聴く」「話す」練習に力を入れるけれども,テストは「読む」「書く」技能を問われる,という現象が起きているのです。

中1で露呈する英語力の格差

ならば,小学校の間に,600ー700語の英単語や文法を教えているのか,と言えば,実は小学校も教科化されたとはいえ,「書く」「読む」技能についてはほとんど学んでいないようで,わたしの英語塾に通う小学生たちの中で,”What time is it now?”という問いに反射的に答えられたとしても,一般動詞とbe動詞の区別のつく小学生はいません。

ところが,中1の教科書最初の課には,一般動詞とbe動詞が混ざって登場し,しかも肯定文だけでなく否定文も疑問文も出てきます。つまり,初心者が最も苦労する,基本ともいうべきその部分は,小学校で習得済み,という前提で教科書は作られているのです。

当然,中1の最初の定期テストでは,学校外で英語を学んできた生徒とそうでない生徒で,格差が出ます。

中1の最初の定期テストは去年までのものと比較しても非常に難易度が高くなっているのですが,実は平均点は意外に低くはありません。

つまり,何が起こっているかといえば,それまで英語のバックグラウンドがある生徒は高得点を取り,そうでない生徒は点数が取れないのですが,学校外で英語教育を受けている生徒が相当数いるため,平均点はそれほど落ちないのです。そうです,中1の英語の入り口で教育格差が点数に表れているのです。

楽しいはずの本格的な英語の入り口で,「自分は英語が苦手だ」などと生徒に感じさせてしまうこのシステムは,極めて不公平だと感じます。

中学の英語の教科書の冒頭には「小学生で知っておくべき英単語」が数百載っています。これは知っているものとして授業も展開されますし,最初のテストもその前提で作成されます。

ならば,その数百の英単語の読み書きができるよう教える責任は小学校にあるだろう,と思うのです。

小学生で塾に行ってなければ中学の最初のテストでつまずくようなことがあってはなりません。

子供の成長は,小学校での英語教育の迷走を待ってはくれません。今も犠牲になっている子供がたくさんいらっしゃるのですから,小学校での英語の教科化の方向性をしっかりと示してほしいと願ってやみません。

以前は,英語は中学に入ってから十分,とわたしは思っていました。進度が亀の歩みのようにゆっくりでしたから。でも,最近ではどうやらそれでは遅そうです。

小学生のうちに自宅でできる英語学習については,「小学生の英語自宅学習~独学で偏差値70・おすすめ勉強方法~」をご参照ください。